秘密基地から始まった人生…

『みんなで家にあるものをもってこよぉ〜ぜ!!』
『じゃ〜明日もみんなでつづきを作ろぅ』
『うん。』
『明日ね〜。バイバ〜イ』
あの頃は、毎日が楽しくって、日が暮れても遊び足りないくらいだったっけ
今じゃ秘密基地なんて造る程の土地もなく
遊ぶ場所だってままならない時代…

『みんな持ってきたか?』
『うん。私は しんぶんし と てぶくろ持ってきたよ。』
『オレは ものおき にあった板を持ってきた。…… てぶくろ は 何に使おうと思ったんだ?』
『…わかんないけど…あながあいてて…もぉ使えないから…基地に使えるんじゃないかと…思って…。』
『…そっか。』
彼はそれ以上、私の手袋については触れず
秘密基地には使えそうにない穴あき手袋を
馬鹿にすることもなく
むしろ「よく持ってきたな。」と、でも言うような顔をして他の子の持ってきたものを見ていた。
…彼はそんな風に、気付かれないところで優しい表情をする
言葉数は少ないけど、彼の気持ちは手に取るように解る気がした

『だいぶ できたな〜』
『すごいね〜!!』
『やっぱり 田村の持ってきた板がなかったら こんなにできなかったよな!』
『こんなに りっぱな 基地は私たちのだけだよね〜。』
『だよな〜!』
『明日もみんなでつづきをやろ〜ぜ!!』
『うん。』
『また 明日なぁ〜。』
『じゃ〜明日ね〜。』

…ポチャン…ぴちゃ…ピチャン…ポチャ…

『今日はダメだなぁ〜。晴れてから続きをやろうぜ。』
『そぉ〜だなぁ。じゃ〜な。』
『うん…。』


雨で秘密基地が壊れていないか気になったのか、毎日 外で遊ぶことが多かったから、家で何をして良いのか解らなかったからなのか…
私は…気が付いた時には基地の側に立っていた

家を出たときのワクワクした気持ちとは正反対に、ただ呆然と基地の側に…


…ガサガサ…バキ…バンッ…バキッ…

あの…あの言葉数の少ない、穏やかな…
ちょっとした時に優しい表情をする田村が、秘密基地を壊して…バラバラに…

…?
板?
自分の持ってきた板?
基地は かろうじて 崩れては いないみたい…。
でも、板を剥がしてる?

『…田村?』
『!!』


とても驚いて、そして悲しそうな…そんな顔で振り向いた彼は…

次の瞬間には、申し訳なさそうな表情で…

『父さんが板を持って帰ってこいって…。』
私は…私は…田村のあの優しい表情を思い出した。
そして…

『…そっか。』
作者: いせんじ なんこ
閲覧数:692
2008/01/27 00:04:09公開

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