メシア

「さあ、行くか」

男は吸っていたタバコを石畳の地面に落とし、靴の踵で踏み消した。

時間は……二十三時三十分。

後三十分で、最後の審判が行われる。

世界の運命?そんな感じのものは、あるとするならオレの掌の中にある。

二十三時三十五分。

大地を蹴り、目の前にあるバリケード目指して走る。

腰から拳銃を二丁引き抜き、前傾姿勢で撃ちまくった。

敵…男の初撃を逃れた幸運な奴らが、泡を食って反撃してきた。

それでも男は止まらない。体を軽く左右に振って銃弾をかわす。

男には見えていた。飛んでくる銃弾、必死に応戦する敵、そして、そのはるか彼方に陣取る、奴の姿が。

バリケードに足をかけ、飛び越えるようにしてジャンプする。

下にいる無防備な敵に、銃弾をばらまいた。



血の海に着地し、弾を詰め替える。

パァン

乾いた音がし、足下の石畳が砕けた。

とっさに飛び退き、岩影に隠れる。

続けて銃声が響き、石の破片が飛び散った。

「狙撃か……」

この暗い中でここまで正確な狙撃ができるということは、狙撃兵は暗視スコープでも着けているのか。

そこまで考えると、後は体が動いた。

スタングレネード。強力な閃光を放つ手榴弾を、おもいっきりほおり投げる。

辺りが真昼のように明るくなり、同時に向かいのビルから身を乗り出している敵の姿が見えた。

目を押さえている。

狙いをつけて二、三発撃ち込むと、狙撃兵はビルから転がり落ちた。



止まっている暇はない。

さらに走り続け、引き金を絞り続ける。

銃声は血を呼び、阿鼻叫喚を引き起こす。

何発か銃弾が体をかすめたが、痛みは感じない。

弾を詰め替える。もう五回目だ。

ようやくここまでやって来た。

男の背中には、とてつもない十字架が背負わされている。人の痛み、悲しみ、涙、怒り。

止まる訳にはいかない。

丘は……目の前だ。

二十三時五十分。

世界の運命とやらは、あと十分で決まる。

最後の審判。

メシアは、丘を登っていく。
作者: オカピ
閲覧数:571
2008/06/22 00:15:18公開

■作者からのメッセージ
なんかバッとひらめいて書き込みました。

これで千文字くらいなんですが、短編っていうんですかね?
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