朝靄の馬車 3

少年は驚きました、彼は人間以外の動物が喋っているのを初めて見たからです。そして結構なボリュームで喋る鼠に周囲の人間が気がつかないのも疑問に感じます。
いつまでも落ち着かない少年を見て鼠は続けます、
「私の声は君以外には聞こえない、君しか聴きとることしかできない。質問を続けるが、何故お前は自分から馬車に乗り込んだんだ。」
少年はとりあえず背にあった大量の藁の中に潜り込み、自分がおかしくなってしまったのではないかと心配になりましたが、鼠も藁に入り込み依然として喋り続けます。
「何故、返事をしない。聾唖か、それとも言葉を知らんのか。」
「言葉を知らない訳ではないです、それよりも鼠が喋りだしたことに驚いているのです。」
なるべく小さい声で鼠に返事をします、それでも自分の話している相手がまだ半信半疑の妄想が具現化した、幼い頃に姉が話してくれた御伽噺の登場人物のように感じます。
「話が通じるようで安心した、私は鼠だ、といっても普通の鼠ではないが名前はない。
 お前の名前を教えてくれ、といっても私はこの奴隷馬車に乗ってから幾年経つが名前を覚えた相手は、二度と面を拝んだものがいない。」
お喋りを楽しむように鼠は流暢に、歌うように語りかけます。声は男なのか女なのか曖昧なニュアンスで、それでも若い感じでえらく陽気です。
「僕の名前はArioです。」
作者: SMINOFF
閲覧数:481
2014/03/22 00:16:25公開

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なし。
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