独白

深夜2時ひとりで流しの下にあった何かの果実酒を氷も入れずに飲みながら考えていた

ああ、あいつをやったのは間違いだった、いっときの感情の昂りだったとはいえ、良い選択ではなかった
縁側の向こう側、歩いて10歩と半分の所にある土蔵に、まだあいつが麻の袋の中に体育座りでそこにある

ああ、どうしたものか

後先考えずフラストレーションをぶちまけた結果がこれだ
何にも解決していない
幸いまだ誰にも知られていない
だがバレるのも数週間、もしかしたら何日間、ひょっとすると数時間の問題かもしれない


酒をくっとあおった
その時だ、グラスの底にぼんやりと影が揺らいだ


おれはそのまま動けずにグラスの底越しにその影を見つめた
水滴がぽとぽとと膝の上に落ちてくる
陰は紛れもなくあいつだった、特徴的な肩の下がり方をしていた
それは癖だった、あいつはいつも右肩だけだらりと落としていたのだ
その右肩だけがけだるく揺れて、グラスの底に映っている



ああ、ああ、二度と逃げることはできないとは知っていた
だけどこんなこと、こんなことあんまりだ



おれはぎゅっと目を瞑ってグラスを投げた
グラスは、どっ、と音を立てて、その次にガロン、と音を立てた

当たった
当たってしまったんだ

おれは目を瞑ったままひどく狼狽した
何故当たってしまったのか

あれはあいつのゆうれいじゃなかったのか
ゆうれいだってグラスに当たるのか、ただそんな偶然があっただけなのか




そういえば小さく呻いたような気がした
目を薄く開けた
グラスのがこちらまで転がって帰ってくきていた
目をもう少し開けて目線をそれに向けた
それは、おれの娘だった
娘はひどく怯えた表情でおれを見た
暗くて月明かりしかない部屋で娘の目がぎらりと光った
震える声で娘はいった
腕を虫に咬まれてしまったの、だからかゆみ止めを貰おうとおもって
娘はそこまでいうと金切り声をだして泣いた
窓が揺れるような鳴き声と、そとの土蔵の中からの気配と、おれの前にあるグラスが不気味に揺れて、おれは後悔した


ひどく、後悔した。


作者: りんご
閲覧数:313
2016/08/19 00:02:55公開

■作者からのメッセージ

蝉は死んでも飛び跳ねる。

あの小説どこだったかなーーと探す日々です
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