風呂場の栓風人(せんぷうじん)

深夜0時過ぎ、飲み会から帰ってきた俺は一直線に風呂場へと向かう。
途中何度かコケそうになって着いた風呂場は何故か電気がついていた。
「泥棒か!」
勢いよくドアを開ける。アラフィフくらいのオッサンが裸で湯に浸かっていた。
閉める。
再度開ける。しかしオッサンは消えなかった。
「消えねーよ! パソコンが常に再起動で直ると思うなよ!」
俺の思考を読んだかのようにオッサンは叫ぶ。パソコンの障害ならどれだけ良かった事か。しかも思春期の少女のような甲高い声が妙に可愛くてムカつく。

「あんたなんだ? 泥棒、じゃなさそうだな」
「ふふ、さあてな」
あー、こいつめんどい。スーツのままで湯船に乱暴に足を突っ込む。胴体も入れ、人二人が入ると湯が溢れ出した。
一瞬、オッサンは面喰らった顔をしたが直ぐに笑みを浮かべた。
「我がテリトリーへようこ」
「うるさい。お前は何なんだ」
両手を広げてドヤるオッサンの言葉をぶった切る。
「風呂のゴム栓の妖精だ」
「風呂場のゴム栓の妖精なんて少なくとも日本じゃ聞いた事ねーよ」
「どの国でもねーよ!」
「じゃあ言うなよ!」
俺はオッサンの額をどついた。

血が出てきた。その量は半端なく、子供なら致死量だ。ちょっと戸惑ったが、オッサンは手を突き出してこう言った。
「おっと、救急車なんて呼ぶなよ。俺は本当にゴム栓の妖精、人じゃないんだからな」
全く呼ぶ気は無かったが、絆創膏くらいは貼ってやろうと思っていた。しかしそれすら今の一言で完全に止めた。面倒臭いし、こいつの男気(栓気)に反する気がしたからだ。面倒臭いし。
やっぱり傷害罪で訴える、なんてことないように、気を紛らわすように俺は話しをしてやった。

難病にかかっている彼女の事。自分が渡した金で快方に向かった事。しかし新たな難病にかかり、さらにお金が必要だと連絡が来た事。その数日後病院にいるはずの彼女に似た子が、嬉しそうに知らない男と歩いているのを見かけた事。
「それな、お前は騙されているんだよ」
「やっぱそう思うか」
「色んな問題に首突っ込んで栓をしてきた俺が言うんだから間違いない」
「そうなんだろうな」
口ではそう認めたが、真実から目を逸らしたかった。オッサンの額から血が絶賛放流中の現実からも目を逸らしたかった。
作者: ミルドラ
閲覧数:148
2016/11/12 00:00:16公開

■作者からのメッセージ
あんぎゃっぎゃー!んげっ!?滑り込みセーフでの投稿だがんなー!?んあ!?平均株価上昇に伴うくま小の変動に死に物狂いで振り落どされねよう耳からも手出しで掴むんだんどー!!
ゲーッタゲタゲタ
(≧∇≦)
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